有明の別れ。

殆どまったく馴染みの無い題名だと思いますが、平安末期に成立した物語です。
戦前まで散逸物語(現存していないが、他の書物の記述により、嘗て存在していたことは確かだと考えられる物語)だと思われ、手掛かりを元にあらすじの推測とかも行われていたのですが、戦後になってひょんなことから現物が現れてしまった、という過去を持っています。ただし、この「ひょんなことから現れた」写本一本しか本文は無く(例えば『源氏物語』とかだと青表紙本系・河内本系・別本系と写本自体が分類できるくらいさまざまな本が伝わっているのです)現在天理図書館に納められている本が所謂「天下の弧本」となっています。

お話の筋は『とりかへばや』に近いもの。

なかなか世継ぎに恵まれなかった左大臣家に神様のお告げを受けて男の子が誕生しました。しかしこの子、本当は女の子だったのを神様が「男として育てるように」と命じていたのです。左大臣は娘を男装させるのに際し、世間には「妹も生まれた」と公表します。娘は人前に出る必要がないので、この「幻の姫君」の存在が怪しまれることはありませんでした。
やがて成人した左大臣家の跡取は大将に出世します。女大将には生まれつき隠身の術、音楽によって霊験を起こす術などが備わっており、彼女は夜な夜な隠身の術を使って他人の寝所を覗き歩きます。そして「男とはなんといやらしいものか。そして女の性とはなんと哀しいものか」と思うようになります。その頃女大将の叔父(左大臣の弟)左大将の邸には彼の後添いとその娘が居ました。左大将は後妻の連れ子である娘を手篭めにし、妊娠させていました。娘は世を果敢なんで沈んでいます。女大将は隠身の術を使い彼女を左大将邸から救い出し、自邸に引き取って「妻」とします。やがて生まれた男の子、更に三位中将(対の上の義兄。左大将の実子)との間に生まれた女の子は女大将と娘(対の上)の子と認知され、世間に認められていきました。
八月十五夜、月の宴の翌日、女大将は帝に正体が女であることを気付かれ関係してしまいます。彼女の苦悩を見かねた父左大臣は女大将は死んだことにし、かねてから用意してあった「幻の姫君」の地位に女大将を滑り込ませ、女御として入内させます。やがて懐妊した女大将は里下がりした自邸で嘗ての妻でり、現在は出家した対の上に会い、以前からの経緯、真相を語りました。女大将の産んだ子は立坊し、彼女は国母となり、帝亡き後は女院として栄華を極めました。


というのが一巻のお話。このお話は三巻三冊で出来ているのでまだまだ続きがあるのでした。
しかし、対の上の身の上の悲惨さは凄いものがありますね。ぞぞぞぞぞ。女大将もこの後、対の上の産んだ男の子(嘗て男装していた頃に自分の子供にしていた左大将の子)から迫られて嫌な目にあうようだし。作者は未詳ですが定家の周辺といわれているようです。どっちにしても男の書いたお話だとは思います。


ところで23時から杜塚くんid:albatrossのラジオが始まりますよー。彼の理想のデートコースについてなど、語ってくださるのだそうです(本当だろうか)