解釈学・系譜学・考古学

永井均さんはこの説明にメーテルリンクの『青い鳥』を用いているのです。
彼によると解釈学は「過去を疑わない」学問なので「青い鳥は最初から青かった」ことに何の疑問の余地もないのですが、系譜学は「かつて青い鳥は青くなったかもしれない」という疑いを持つ学問なので「青い鳥はいつ青くなったか」ということが問題になるのだとか。そして現実に人々が陥っている思考の経路は「解釈学的系譜学」つまり、「今の現実に合うように過去を都合よく記憶する」ということ。『青い鳥』でいうと「青い鳥がうちに居たということは本当はかつての我が家は幸福だった、と考えること」になる。
そこで彼は「過去は考古学的に捉えるべきだ」と仰るのです。現在と完全に切り離して過去を過去という時点だけで見るべきだ、と。「かつての我が家に居たときには自分が幸福か不幸かなんて考えていなかった」という事実だけが問題である、ということ。


……。なのだとか。どう考えても『青い鳥』を喩えに使うのに無理があるような気がしてならない。