金色夜叉。

憧れのぱそ子先輩の日記を拝見したら「『金色夜叉』を読んでいる」とあってわくわくしました。私は大学の二年生の頃、近代文学の講義でこのお話を読みました。熱海には宮さんと貫一さんの像があって、それは新派演劇の貫一さんに倣って下駄で宮さんを蹴飛ばしているけど、尾崎紅葉のお話では普通の革靴なんですよね?
尾崎紅葉は胃癌で死んだので、凄いところで終わって(未完のまま)いて「何だこれー!」と言いたくなりました。読売新聞に連載していた当時は良家の奥様やお嬢様方から新聞社というか尾崎紅葉宛てに「あなた、宮さんをどうなさるおつもりなの?」という手紙が引きもきらずに来ていたそうです。貫一さんの学生服の印象というのは結構浸透していて、太宰治が『デカダン抗議』の中で

私は、高等学校の制服、制帽のままだった。謂(い)わば、弊衣破帽(へいいはぼう)である。けれども私は、それを恥じなかった。自分で、ひそかに、「貫一さん」みたいだと思っていた。幾春秋、忘れず胸にひめていた典雅な少女と、いまこそ晴れて逢いに行くのに、最もふさわしいロマンチックな姿であると思っていた。私は上衣のボタンをわざと一つ毟(むし)り取った。恋に窶(やつ)れて、少し荒(すさ)んだ陰影を、おのが姿に与えたかった。

と書いています。青空文庫に入っているのでさくさく読めます。『デカダン抗議』は『おしゃれ童子』と並んで名作だと思います。うん。
大学二年生の頃、私は貫一さんが大嫌いでしたが今ではそんなことはない気がします。そして尾崎紅葉はさすが、胃癌で死んだだけあって、胃痛の場面の描写は秀逸だと思います。