夜叉ヶ池。

ちくま文庫から出ている泉鏡花集成の七巻に入っていました。

主だった登場人物は萩原晃(鐘楼守)百合(娘)山沢学円(文学士)白雪姫(夜叉ヶ池の主)です。



越前国大野郡鹿見村琴弾谷では一日に三度、鐘が鳴る。鐘楼守の萩原晃が撞く鐘の音である。彼は数年前、小旅行の際に出会った百合の父から「夜叉ヶ池の主と人間との契約で一日に三度、鐘を撞かねばならない」と聞かされる。この契約が履行されている間は付近の集落が水害に遭うことはない、というものである。萩原は頓死した百合の父からこの仕事を引き継ぎ、百合を妻としてこの地に留まる。
夜叉ヶ池の主、白雪姫は千蛇ヶ池の若君に恋をしている。彼に会いに行きたいが人間が鐘を撞き続ける間は夜叉ヶ池を離れることが出来ない。白雪姫は集落の人間との契約を破っても千蛇ヶ池の若君の元へ行きたいが、ただ、鐘楼守の妻、百合への親しみ故に人間との契約を守っている。
ある日照りの夏、萩原の旧友山沢学円がこの地を訪れる。彼らが夜叉ヶ池を見に行った間に麓の村人達が雨乞いの生贄にしようと百合を攫いにやって来る。百合は間一髪で戻ってきた萩原と学円に救われる。が、村人の暴動を恐れ鐘楼で自害する。萩原は学円を逃がし、撞木を落とす。
丑満の鐘が鳴らなかったので白雪姫は嬉々として夜叉ヶ池を離れ、恋しい千蛇ヶ池の若君の元へ渡っていく。



と、こういうお話(戯曲)です。萩原さんの台詞がなかなか素敵だな。大正2年の作ですがそんなに古めかしい感じじゃないし。「神にも仏にも恋は売らん」とか、最近の戯曲でもありそうじゃないですか? そう言えばよく、「一人は遣らん!茨の道は負ぶって通る」という台詞を見ますが、「夜叉ヶ池」にもありました(自害した百合さんに萩原さんが)一体何が初出なんですかね? 誰か教えて!