不貞な和歌。

お嬢さん方と『和泉式部日記』を学んでいるのです。
為尊親王に死なれた和泉式部のところに為尊親王の弟、敦道親王が橘の花を持ってきます。
平安朝の人間ならば橘の花を見たら「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香する」(五月を待って咲く花橘の香りをかぐと昔の恋人の袖の香がする)を思い出し、常識人ならば当然、「あなたのお兄さん(=為尊親王)を思い出すと寂しくて・・・・・・」という歌を返すのが普通。でも和泉式部はただ者ではないので

  薫る香によそふるよりはほととぎす聞かばや同じ声やしたると

と詠みます。
直訳すると 橘の香りにかこつけて為尊親王を偲ぶよりはあなたの声が聞きたいものです。亡きお兄様と同じ声をなさっているかと

なかなかこの訳をしてもお嬢さん達には内容が掴み辛いようでした。ので「これはつまり、『亡くなったお兄さんはもう別にどうでもよいの。私は今は、あなたに会いたい』ということなのですね」と教えておきました。お嬢さん方からは大顰蹙でした。あはは。私が悪いんじゃないよ。「これって本当にあった話なんですか?」と聞かれたので、「何から何まで本当とは言えないけれど、実話と言えば実話ですね」と答えておきました。

和泉式部日記』でこの顰蹙ぶりなら『源氏物語』をやったらどうなってしまうのか(しかも教科書は藤壷と光源氏の密通場面ときている)空恐ろしいものがありますね。ふふふふふ。