合意情死―がふいしんぢゅう―。

そりゃあ妾は、死んだらおえんと思うちょる。しゃあけどな。「わしと一緒に死んでつかあさい」ゆうて頼まれたら、ふらふらっと酔っ払ったようになって薬でも何でも飲んでしまう気ぃのするわ。しゃあから、六高の学生さんと消毒用フォルマリン飲んでしもうた華美粉飾のお女郎の気持ちも、奥さんにせっ突かれた絵描きさんと、しょうことなしに合意情死してしもうた女学生の気持ちも、わからんではないんよ。「寝た間が極楽」ゆうじゃろ。あれと一緒じゃ、死んだら終いじゃけえ。死に損のうたお女郎の行く地獄と、人様の夫を横取りした女学生の行く地獄と、どっちゃがきょうてえんじゃろな。きょうてえもんほど、綺麗なんは確かじゃけど。
死ぬ間際にゃあ、それまで生きてきた間の出来事が自動幻画みてえに頭ん中にうつるゆうけど、あれ、ほんまじゃろか。妾の死に際にゃ、何が見えるんじゃろな。巡行線路でいやぁなもんを待っちょった夜のことか、勧商場のきらきらする電飾の灯か。まぁ、そんなんどっちゃでもええ。なぁんも見えんほうが返ってさばさばしてええくらいじゃ。
しゃあから、な。誰ぞ妾に友情答語をしてくれんじゃろか。「あんたの為なら死んでもええ」ゆうてくれたら妾、いつでもついていくんじゃがな。

・・・・・・。岡山弁で『合意情死』の各短編の題を折り込んで、なんとか一続き、文を綴ってみたんじゃが、何が言いたいのやらわからんようになった。誰か助けてつかあさい。